多発性骨髄腫の診断
【編集協力】千葉大学医学部附属病院 血液内科 科長・診療教授
堺田 惠美子 先生
診断に必要な検査
尿検査
タンパク尿の有無
尿に出ているMタンパクの量
骨髄にどれくらい骨髄腫細胞があるか
病気の進行リスクが高くなる「SLiM」指標
治療が必要かどうかの判断には、以下の3つの進行リスクの高い状態が特に重要とされています。
これらは、その頭文字をとって「SLiM(スリム)」と呼ばれることがあります。
検査の結果からこれらの指標が見つかると、まだ症状が出ていなくても治療が必要と判断されることがあります。
出典
1)日本骨髄腫学会 編: 多発性骨髄腫の診療指針2024 第6版. p24-30, 文光堂. 2024
多発性骨髄腫の前段階について
多発性骨髄腫には、症状がまったく出ていない軽微な検査異常のみを認めるごく早い段階から、より進行した臓器障害や貧血、骨折などの症状が現れて治療が必要になる段階まで、さまざまな状態があります。
血液検査でMタンパクという異常なタンパクが見つかっても症状がなく、ほかの病気の影響もない場合には、「意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)」と診断されます。
また、Mタンパクが増え骨髄の中の形質細胞が多くなっていても症状が現れていない場合は、「くすぶり型多発性骨髄腫(SMM)」と診断されます。
MGUSとSMMは、ともに多発性骨髄腫になる前の段階と考えられています。多発性骨髄腫へ進展する可能性が高いと考えられるSMMを除き、一般的にMGUSやSMMは、すぐに治療を始めることはありません。将来的に多発性骨髄腫に進行する可能性があるため、定期的に検査を受けて経過を見守ることが大切です。
多発性骨髄腫の病期とは
検査の結果をもとに、多発性骨髄腫は3つの病期(ステージ)に分類されます。
この病期によって、診断後の経過をある程度予測することができます。
病気が進行すると、血液中のアルブミンが減ったり、β2ミクログロブリンが増えたりします。
これらの数値をもとにした分類を「ISS分類」といいます。
ISS分類1)
| ステージ | 基準 |
|---|---|
| Ⅰ | アルブミン3.5g/dL以上 β2ミクログロブリン3.5mg/L未満 |
| Ⅱ | ステージⅠでもⅢでもない |
| Ⅲ | β2ミクログロブリン5.5mg/L以上 |
日本骨髄腫学会 編: 多発性骨髄腫の診療指針2024 第6版. p31-33, 文光堂. 2024より作表
最近では、さまざまな治療薬が使えるようになり、患者さんの予後(病気の進み方や見通し)が改善されています。
そのため、より詳しく分類するために、以下の2つの情報も加えた「改訂版ISS分類(R-ISS分類)」も使われています。
進行しやすい染色体異常があるかどうか
乳酸脱水素酵素(LDH)という物質の量(骨髄腫細胞の活動性を示す)
R-ISS分類1)
| ステージ | 基準 |
|---|---|
| Ⅰ | アルブミン3.5g/dL以上 β2ミクログロブリン3.5mg/L未満 染色体異常がない LDH正常レベル |
| Ⅱ | ステージⅠでもⅢでもない |
| Ⅲ | β2ミクログロブリン5.5mg/L以上 染色体異常あり LDH高レベル |
日本骨髄腫学会 編: 多発性骨髄腫の診療指針2024 第6版. p31-33, 文光堂. 2024より作表
出典
1)日本骨髄腫学会 編: 多発性骨髄腫の診療指針2024 第6版. p31-33, 文光堂. 2024
多発性骨髄腫の予後
多発性骨髄腫は比較的ゆっくり進行する病気とされています。
急に悪化することは少なく、病期(ステージ)Ⅲの患者さんでも、約4割の方が5年以上生存しているというデータもあります1)。
日ごろから体調の変化に気を配り、気になる症状があれば、早めに医師に相談しましょう。
出典
1)日本骨髄腫学会 編: 多発性骨髄腫の診療指針2024 第6版. p31-33, 文光堂. 2024